恋はまるで、粉雪のようで。
ビールを飲みながら、いろんな話をした。


普段洋服を買う場所。


好きな食べ物と苦手な食べ物。


これから行きたい場所。


仕事での失敗談。


家族の話。


話題は途切れることがなくて、いつのまにか深夜0時を回っていた。



「そろそろ寝ようか、明日会社だし」


「そうだね、新しい歯ブラシ出すね」


洗面台に向かって、鏡を開くと出てくる収納から歯ブラシを取り出した。


突然、櫂くんが後ろから私を抱きしめた。


鏡にうつっている自分たちが、イヤでも目に入ってくる。


「どうしたの?」


「ねえ、その歯ブラシ捨てないで置いておいて」


「わかった」


「また泊まりに来たら、使うから。


あと、今度は『ただいま』って言いたいんだよね。


『おじゃまします』は、他人の家に入る時に言うでしょ。


俺たちもう、他人じゃないから」


「そういう意味だったんだね、ごめん鈍くて」


「鈍いって知ってる」


「図星だけど、ストレートに言われると傷つくな・・・」


「そういうとこも好きなんだよ」


「私は、櫂くんの真っ直ぐなとこが好きだよ」


「ありがと」


歯を磨いて、寝室に入って、一緒に眠る。


少し前の私には、想像もしなかった状況に驚いてしまう。


よくよく考えてみたら、つきあい始めて1ヶ月もたってない。


これは、軽い女ってやつじゃないんだろうか。



黙ったままの私を、櫂くんは問いつめることもなく。


セミダブルの少し狭いベッドに入った。







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