愛と勇気の英雄伝承


「はぁ、はぁ、つかれたぁ〜」

赤くなった手に息をかけながら、ラズリが洞窟に入っていった。








ガタンッゴトンッ

ソリの上の荷物がゆれる音がする。

きれいな銀世界を、ソリがすべっていく。

「お前さ、どこで育ったんだ?」

「え?」

急にそんな話しをしてくるものだから、ビックリして顔を上げる。

「俺はな、とても貧しい国で育ったんだ。
でも、国民は皆幸せそうで、俺は自分の国が大好きだった……。」

(だった……?今は好きじゃないのかな?)

きょとんとして、しばらく待っていると、またルシフが話し始めた。

「俺の国は……アイルナイン国は………、 今はもう存在しないんだ。」

「え?それってどういう……?」

「戦争さ……。」

たづなを持っているルシフの手は、ふるえていた。

ラズリは、ルシフの手に自分の手を重ねると

「大丈夫、国はなくなってなんかいないわ?」

ビックリしたルシフが、ラズリを見つめる。

「ほら、あなたの心の中に、あなたが覚えている限り、国は生き続きるのよ」

ね?と、ルシフに笑顔を見せるラズリの優しさに

初めて涙を見せた。







「そう言えば、ラズリ? の、生まれたところは?」

涙を袖でふきながら

そう言ってきたルシフに

自分も嘘をつくのはいけないと思ったので

正直に言う事にした。

「お城!」

「ん?ごめん聞き間違えた……もう一回!」

「お城だよ!」

ルシフは、一度そうかそうかと

納得すると……

「お、おおおお お城ぉー?!?!」

と、叫んだ。

「むぅー!私がどこで生まれたと思ってたのよっ!?」

【いや、納屋だと思いましたけど……言えない…】










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