愛と勇気の英雄伝承
「……お母様、ねぇお母様?」

キィ、と

ドアを開け、

母、ジュリアの部屋にそっと入る。

「どうしたの?リベア。」

母は、病弱な私を

優しく包み込む様に、抱き上げた。

「お母様……、大好き!!」

「私もよ、リベア。」

おだやかな日々を送っていた。

幸せ“だった”。

お姉様が、余計な事をしなければ

私は、平穏に暮らせていた……。

少しくらい苦しくても

お母様の愛が無くなるくらいなら

苦しくても、我慢していられる。

「皆、お姉様の方を愛しておられるのね…。」

自分で言いながら、目から冷たいものが流れた。

ポロポロと、床をぬらしていく。

まるで、むしばまれていく

このお城みたいに……。

そこに、一匹のちょうが

ヒラヒラと舞い降りた。

「まるで、下世話なお姉様みたいね。」

なぐさめる様に、ヒラヒラとキレイな羽をなびかせるちょう…。


グシャッ!!


コツコツ・・・。

リベアが去った後に残ったのは

涙で濡れた床にしおれたちょうだった。

でも、リベアは、知らなかった。

そのちょうが、また羽を広げ

飛ぼうとしていた事に……。






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