ソルト
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「橘花~、古典貸して」
「はぁ?また忘れたの?和樹わざとなの?…あー、実は私のこと好きなんでしょ!」
「んなわけないじゃん、冗談は顔だけにしとけよ」
「そんなこと言ってる人に貸す気ないんですけど」
「ぎゃ、ごめん」
「ハーゲンダッツだからね」
「…はい」
さんきゅっ、と言って隣の教室に帰っていく後ろ姿を見送りながら、少しだけニヤけた顔を慌てて元に戻す。
初めて話した日から半月以上過ぎ、私と和樹は冗談を言い合えるほどの仲になっていた。