ソルト


***




「橘花~、古典貸して」


「はぁ?また忘れたの?和樹わざとなの?…あー、実は私のこと好きなんでしょ!」


「んなわけないじゃん、冗談は顔だけにしとけよ」


「そんなこと言ってる人に貸す気ないんですけど」


「ぎゃ、ごめん」


「ハーゲンダッツだからね」


「…はい」


さんきゅっ、と言って隣の教室に帰っていく後ろ姿を見送りながら、少しだけニヤけた顔を慌てて元に戻す。


初めて話した日から半月以上過ぎ、私と和樹は冗談を言い合えるほどの仲になっていた。

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