ハレソラ
4月。

プロローグ

桜ーーー。それは、新しい出会いを連想させる花だと思う。

って、誰かから聞いた。私自身、身に染みてそれを感じたことはあまりないけれど…。むしろ全くない。出会いの全てなんて桜が咲く前にとっくに終わってる。

入学式。それは新しい人達の出会いの場であり、新入生はみな緊張するだろう。だが私の場合は違う。中学生の頃から、テニス部に所属していた私は大会で他校との関わりが多くて、中学校の時点で多くの友達がいた。それに、入学前にTwitterなどのSNSで新入生同士仲良くなってたし……。正直、入学してから友達作りには困らなかった。

それからはや一年。高校二年生になった私は一年前と同様に友達作りには全く困らなかった。

そんなことを考えながら、私は満開の桜並木の学校へと向かう上り坂の道を歩いている。

「おっ!綾〜!」
と、私の横に自転車に乗った幼なじみの光成秋人がやって来る。
「何。あんた朝から元気じゃない?」
「そうか〜?ま、オレより里奈のほが元気だと思うけどな〜。」
「…確かに。それは言えてるわあ。」
里奈とは私のもう一人の幼なじみである。そして今年はなんと同じクラスになった。多分、彼女は遅刻の常習犯だから後から急いで学校に来るのだろう。
「だろ?じゃ、オレ先行くわ〜。じゃーなー、遅刻すんなよ〜。」
そう言うと、秋人はペダルを思いっきりこいで、坂を上っていく。
「心配しなくてもするわけないでしょ!」
私はその背中に向かって叫ぶ。

はあー。朝から慌ただしいな本当に。
「おはようございます!」
「おはようございます。」
桜並木を掃除している生徒に挨拶を返す。その生徒以外にも二十人ほどの生徒が掃除している。何部なんだろう…?

「それでさー。「え!?マジで!」」
そうこう考えていると二人の男子生徒が私の横を通り過ぎていった。その二人はお菓子を食べながら歩いていて、食べ終わったごみを手に持っていた。

するとーーー、一人の生徒がごみを道にポイ捨てした。そして、それに続きもう一人の生徒も捨てる。そのまま二人は何もなかったように校門へと入っていった。

え……。
私は男子生徒が捨てたごみを手に取る。
何…、あいつら常識なさ過ぎるでしょ…。ただでさえポイ捨てするの良くないのき、よりによって掃除してる人達の前でポイ捨てするなんて…。

私は信じられなかった。
「あ…あの……。」
誰かに後ろから声をかけられたので振り返る。
「あの…ごみ、この袋に入れてもらえると…。」
そこにいたのは、メガネをかけた目立たないような男子。
「あの…?」
私がしばらく動きを止めていたためであろうか、男子生徒は首をかしげて私に再び話しかける。
「あ、ゴメン。ありがとね。」
そう言って私は彼の持っていたゴミ袋にごみを入れる。
「お疲れ様。…頑張ってね。」
私はそう言い、校門へと歩いていく。

桜の花は満開であった。

桜ーーー。それは、新しい出会いを連想させる花だと思う。
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