嫌いじゃないよ、好きでもないけど
「そういえば今度試合あるんだけど観に来る?」
「えー…寒いじゃん」
「ちょっ、親友の試合だよ!?そこは観に来るべきでしょ!?」
「仕方ないなあ……行くけど、実の試合だけ観たら帰るからね」
「ありがと!」
実は女テニ部の中でも強くて、地区予選なんかに行くレベルだ。
テニスのことはよく分かんないけど、組んでる女の子も明るくてかわいいコだから試合にはよく男子も観に来るんだとか。まあ私ほどかわいくはないんだけどね。
私は暑いのも寒いのもイヤだから帰宅部なんだけど。
「あ~っ!!!!」
突然、実が叫び声をあげた。
ちょっと、目の前でやめてよ……周りの人にも凝視されちゃってるし、肩はビクッ、って大きく跳ねちゃったし……まあそれさえかわいいのが私なんだけどさあ。
「うるっさい…」
「ごめんごめん!いや、やっぱ私の試合の後も観てほしいと思って」
「はあ?なんで」
「イヤ、今回の試合は女子の後に男子があってさ。隆樹も出るから」
「ふーん」
隆樹(りゅうき)っていうのは実の幼なじみ。
私は赤間って呼んでるんだけど、実と赤間はいいカンジなんじゃないかなと思う。
赤間はヤンチャな男子で友達も多く、ムードメーカーだ。
テニスも上手くて運動神経もいいから結構モテるのに、今まで告白してきた女子の事は全員フっている。しかも理由が「好きな奴、いるから」。
絶対に実のことだと思うんだけど、実は自分じゃないと思ってるし、たぶんそのせいで自分の想いに素直になれてない。
けど……たぶんもうすぐしたらどっちかが告白してめでたくゴールインするだろう。
「あ、隆樹の友達の王子も観に来るんじゃない!?」
「おーじ?誰、それ」
「えっ知らないの!?ホント姫は同じクラスになったことない人に関しては全く知らないよねえ…」