小話置き場
「先輩といたら、どんどん弱くなるんです。ワガママになって、もっと欲しくなって。ずっと一緒にいてほしくて、もしも先輩にフラれたら、たぶん私、もとの私には戻れないなって」
要領を得ない私の言葉と涙が、辛そうな顔で私を見上げる彼の上に落ちていく。
私が彼に告白する前から、ずっとあった不安。まっくろい感情。
それを持て余したまま、この人がもし私の前からいなくなったら、どうなっちゃうんだろうって怖かった。
私は今まで、先輩に対して『ずっと一緒にいてね』とか、そういう永遠を思わせる恋人たちの言葉を使ってこなかった。
約束するのが怖かったからだ。彼の重すぎる愛情を前にしても、私の心の中にはずっと『いつかフラれるかもしれない』という不安があった。
いや、むしろ確信めいていた。『たぶんきっと、いつかフラれるときがくる』って、なんとなく思ってた。
自信がなかったから。先輩を、ちゃんと信じてなかったから。
汐見先輩はあまりに私を受け入れてくれるから、それが少し信じられなかったのかもしれない。こんな都合のいいこと、ずっと続くわけないって、そう思っていたのかもしれない。