正義の味方に愛された魔女3

その男の子は、お買い上げ品を受け取る時に、私の手ごとガッツリ握って、アタフタと逃げる様に出て行きました。

なんだか気弱そうな人でした。




「沙耶ちゃん、今のお客様、私は初めて視たけど、何度かお見えになってた?」


「いいえ、私も初めてです。
なんだか、気弱そうでオドオドしてましたけど、恥ずかしがり屋さんなんですかねぇ。ふふ」


「う~ん……。
ちょっと掠った時、視えたの……。
あの男の子がね……そうか…どうしよう…。

結構前からこの店のこと知ってるわ。
やっと入って来れたって感じ。
なんか心配だわ。

沙耶ちゃん……帰宅後の連絡、忘れないでね?」


「百合さん、あのお客様なんかありましたか?
……はい。家についたら連絡、ですね」


「あ、いや、やっぱり、駅に着いたら一回電話かLINEちょうだい?

……あのね、あの子、引きこもりネットオタクでね、例のクチコミの中傷した本人……。

ちゃんと視てないからわからないけど、
沙耶ちゃんに想いを寄せている感じなのよね。
ネットの中傷で気を引きたいとか?歪んでるわね。
なんか危ないわ。今日だけでも閉店までいる?送っていくから」


「……えー?怖いです…。で、でも閉店まで居るのはちょっと…。
直ぐに大きな通りに出るから、大丈夫ですよ。何かあったら叫びます」


「そう?絶対連絡してね?何かあったらワンコでもなんでも…」


「はい、わんわんっ!……ワンコールで緊急連絡します。
百合さんの心配しすぎかもですよ?あの人すごく気弱そうでしたから、怖いこと出来そうにないですよ」


私は百合さんの言うように誰かに想いを寄せられるなんて経験は一度もなかったので、
心配しすぎだと、その時思ってしまったのです。





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