課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 ……彼女の前では少しは優しいのだろうかな、とちょっと想像がつかず思っていると、雅喜は言った。

『だが、少し思い当たる節がある』

「え?」

『この申し込みの日付だが、あの飲み会の日なんだよ。

 それに、この場所。

 お前、壁にかけてあったミュシャっぽい絵を見て、なんだかんだ言ってたろう。

 この宿があるの、今、ミュシャが来てる美術館のある街なんだ』

 わー……と思わず、言ってしまっていた。

 後悔とともに。

「そういえば、行きたいとか言いましたね、私」
と言うと、覚えてるのか、と言ってくる。

 雅喜はなにも覚えていないようだった。

「いや、うっすらとですけどね」

 それで即行、その場で頼むとか、どうなんだ、私たち、と思っていた。

「私、二度と酒は吞みません」

『それはいいが、これ、この土日だぞ』

 それはいいがって。
 他人事かと思って。

 自分で言っておいて、そうですよね、私が一生酒が呑めなくても、貴方には関係ないことですもんね、といじける。

 っていうか、貴方も酒、やめた方がいいですよ、と思った。

 酒の席で女の子と話が合うたび、旅行に行っていたら、そのうち、刃傷沙汰になるに違いない。
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