課長の瞳で凍死します 〜Long Version〜
 誓いの言葉のあと、神父が言う。

「では、誓いのキスを」

 うう。
 人前でやるのは、ちょっと恥ずかしいんだけどな。

 ましてや、カメラマンの人までこんな近距離に……って。

 これ、まさか、パンフレットとかに載ってしまうのだろうかっ? と焦る。

「沢田、覚悟を決めろ」

 あの凍てつくような瞳で見られたが、
「か、課長にそう言われると、余計、緊張します」
と真湖はブーケを握りしめる。

 此処まで来て、まだ、沢田、課長のままだった。

 いや、おそらく、まだしばらくは、このままだろう。

「やめてもいいが、誓いのキスには、誓いの言葉を封じ込め、永遠のものとする、という意味があるそうだぞ」

 キスする前から、カメラマンは恥じらう真湖を何枚か撮っているようだった。

 真湖は強くブーケを握り、此処をあの線路沿いの道だと思おうとした。

「一杯呑んでくればよかったです……」
 思わず、そうもらすと、雅喜が、莫迦か……と笑った。

 その笑った顔を見て、わあ、可愛いとか思ってしまった。

 思わず、見惚れたとき、雅喜の手が肩に触れる。
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