偽りの御曹司とマイペースな恋を


不満はあるけれど、お腹も空いたので歩は渋々服を着て戻る。
その間にテーブルにはちょっと残念な唐揚げが山盛り。

「今度ノゾミンここに招待するね」
「なんで?」
「イツロ君ともぜひ仲良くなってほしいから。で。どんな奴か分かって欲しいし」
「……瑞季系?」
「似てるけどちょっと違う」

たぶん、本人と会って話をしてくれたら「なんだ」ってなると思うから。
きちんと紹介をしておけば瓜生を悩ませずにすんだ。
ただ、内心あそこまで怒られてちょっとだけ嬉しい乙女心。

いや、イツロ君の場合優しいのと屈折した心で思いつめるので

もう二度とあんな顔はさせない。

「そうか。まあ、…そうだな。見ておくか」
「うん」
「そうやって笑ってるとほんと可愛い。骨抜きってこういう事なんだろうな…」
「そ、そんな言わなくってもいいの!恥ずかしいの!から揚げたべるの!」
「…どうぞ。山ほどあるからな。だから、暫く見てるよ」
「見ないで!」
「いいだろ。どうせお前の正面に座ってるんだ」
「……いじわるする」

見つめられながらも仲良く2人で分けて食べた。
もう瓜生は何時も通り。歩はちょっと残念だった。
唇で触れられた体はまだ少し熱いのに。



「……な、なあ。歩」
「なに?」

ご飯を終えて片付けを一緒にする二人。
お皿を片付ける歩に何処かオロオロしながら声をかける瓜生。

「…い、…一緒に、寝ないか」
「うん。いいよ」
「……俺の部屋で」
「え!」

ずっと鍵をかけられて二人で入ることは禁じられた部屋に?

それってつまり

そういうことですか?

「い、嫌なら」
「ううん!全然嫌じゃない!やる!やるよ!」
「…やる?」
「あ、あの。初めてだけど、…よろしくお願いします!」
「……え」

もう一度お風呂に、いや、シャワーを浴びよう。

顔を赤らめてお風呂場へ向かう歩。
さっと体を洗って出てきたら入れ違いに瓜生が入り。
ワクワクしながらリビングのソファにすわって待つ。

「おかえりなさい」
「あ、ああ。ただいま」

30分ほど待ってパジャマ姿でリビングに来た瓜生を笑顔でお出迎え。

相手ははにかんだ笑みでそれに答える。

「さあ行こう。イツロ君の寝室」
「……歩」
「大丈夫。私は、諦めないから。それでイツロ君をゲット出来たんだし」
「……ありがとう。行こう、歩。俺、その。さ、触るよ…お前に」
「うん」
「あ。だからって変なことをしようとかは思ってないからな」
「はいはい。とにかく、イツロ君のベッドでいっぱい触って」
「そ、そういう言い方は」
「行こう」
「あ、ああ」

歩から瓜生の手を繋いで。ニコっと微笑み一緒に寝室へ。
ただそれだけなのに、一緒に寝ることはよくあるのに。
彼の寝室というだけで、何だか変な感じ。

「……イツロ君」
「ん」
「興奮して眠れないかもしれないから闇よりの呼び声読んでもいい?」
「俺が眠れなくなるからやめてくれ」




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