一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

「ここでいいよね?」

 会社近くの緑地公園のベンチで、まどかと並んで座った。

新緑がまぶしい季節。こんな青空の下で、話す話題ではないけれど。私は地面をついばむ鳩をみつめながら話を切り出した。

「あのさ、確かめておきたいことがあるんだけど。隆のこと、本気で好き?」

「なんでそんなこと聞くんですか? 当たり前じゃないですか。私は隆さんが好きです」
 
 まどかの目はうるんでいた。泣き出すのかと思うくらい。でも、ここで引き下がったらせっかく呼び出した意味がなくなる。私は話を続けた。

「聞いた話によると合コンに行ったり、社外の人と付き合ったりしてるって聞いたよ。もし、隆の事遊びなら、私に返して欲しいの」

「……うざ」

 ボソリ、とまどかは言った。彼女の口から出るとは思えない言葉だった。

「は?」

「負け犬のくせにうっざ。いっとくけど、声を掛けてきたのはあっちだから。その時私には彼氏いたし。まあ、出世頭だし、乗り換えるには丁度いいかなって思って付き合い始めたけど、顔もエッチも前彼の方がよかったな」

「そんなこというんだったら、元の彼氏に戻ればいいでしょ!」

 私は隆のエッチに満足してたけど、とは言わないけれど。

「やですよ。隆さんの実家、お金持らしいですし。この靴も、かわいいなーって言ったらそっこーで買ってくれたんですよ。結婚相手にはもってこいですよね。だから返しません」

 フェラガモは、隆からのプレゼントだったなんて。給料がいいのは知っていた。けれど、将来のために貯金しているからって、高価なプレゼントなんてくれたことなかった。でも、それは私たちの結婚資金だって思っていたから生活費の大半は私が出していた。それが彼女としての務めだと思って。

なのに、この子には惜しげもなくお金をつかうなんて。腹が立った。別にプレゼントが欲しかったわけじゃなく、おそらく私は、私とは違う愛し方をされているまどかのことが羨ましかったのだ。


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