一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
三十分ほど車を走らせると、游さんの実家へ到着した。
高い壁に囲まれていて、中は見えない。
ガレージに車を駐車すると車を降り、游さんは立派な門の隣にある扉をかぎで開けた。
「どうぞ入って。足元気を付けてね」
「はい」
私は差し出された手を取って、扉をくぐった。目の前には立派な庭園が広がりその奥には大きな日本家屋が見える。まるで高級料亭のようだと私は思った。
玄関へと続く石畳。その隙間を埋めるように敷き詰められた玉砂利。よく手入れされた松の木や桜、楓などが植えられ石造りのと灯篭が上品に配置されている。池には小さな橋が架かっていて、水面にきらりと光るうろこが見えた。おそらく錦鯉が泳いでいるのだろう。
私は視線を足元に移し、ゆっくりと歩みを進める。すると突然植え込みの陰から大きな黒い影が表れて私に飛び掛かってきた。
「きゃあ」
驚いた私はギュツと目を閉じた。グラリとと体が傾く。
「おっと、由衣子ちゃん大丈夫?」
よろけそうになった私を游さんが支えてくれた。そして少し強い声色でこういった。
「こら! バロン。いきなり出てきたらビックリするだろう」
「バロン?」
私はこわごわと目を開けた。す ると足元にはしゅんとした顔のドーベルマンがおすわりの状態で游さんを見上げていた。
「こいつ、バロン。番犬として飼っているから家族以外にはすごい勢いで吠えるんだけど……」
ーー「バロンが吠えないなんて珍しいな」
聞き覚えのある声に私は身を固くした。
「父さん!」
「来るなら来ると連絡ぐらいしなさい」
永峯理事長は游さんに向かっていった。
「なにいってるんですか!何度も連絡したのに電話にすら出なかったくせに」
「ああ、申し訳ない。昨日まで日本を離れていたから携帯の電源を落としている時間が長かったんだ……とにかく、家に入りなさい。話があってきたんだろう」