一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
私は待ち合わせの時間まで新宿のカフェで時間をつぶし、七時十分前に恵比寿像の前に立った。
異動の話があって、合コンに参加する気持ちにはなれなかったのだが、紘子は私のために必死でメンバーを集めてくれたのだと思ったら、無下に断るのも申し訳ない様な気がして。
それにしてもひとが多い、私と同じように待ち合わせをしているのか、スマホをいじりながら壁際に立っている人がたくさんいる。ハチ公前よりも年齢層が少し高めの恵比寿像前。落ち着いた雰囲気のお洒落を楽しんでいる人が多い印象だ。
「お待たせ~、由衣子待った?」
私が恵比寿について五分も経たないうちに紘子が現れた。
「ううん、今着いたとこ」
「そっか、ならよかった。……って、おい、なにその服装」
紘子は私の頭のてっぺんからからつま先までをくまなく見て、やれやれとばかりに肩を落とす。
「なにその服」
「え、着替えないとだめだった?」
「だめってわけじゃないけど、合コン向きじゃなくない?」
確かに、ファストファッションを組み合わせたオフィスカジュアルは合コン向きではない。しかも、パンツスタイルだ。
「そうだね」
「まあ、仕方ないか。いきなり誘っちゃったし。あたしはこういう場合も想定して、会社のロッカーに勝負服を置いておくのよ。それがない時は、途中かって着替えたりもするよ」
「へえ、そうなんだ」
通りで朝の服装と違うと思った。見れば靴まで違う。みんなこういう努力をしているんだろうか。私には到底真似できない。
「じゃあ、行こうか。他の子たちは店についてるかな」
「他の子って?」
「ああ、ごめん。今日は五対五でセッティングしたの。少人数よりも、出会いの確立が増えていいでしょ?」
「そう、かな」
「絶対そう。男性側は、一流企業のエリートばっかり集めたっていってたし、頑張って彼氏ゲットしなよ!」
「う、うん」
紘子にあったら、本社の営業部から物流センターへ異動することになってしまったことを聞いてもらいたかったのだけれど、紘子はもう目の前の合コンのことで頭がいっぱいになっている。
私は話すことを諦めて、紘子の後に着いていった。