一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

《出て行ってもらうしかないよね》

 ……やっぱりそうだ。

「すいぶんとまあ、さらっと酷なこと言うよね」

 言いたいことをハッキリと言える、そんな紘子のことは嫌いじゃなかったりするんだけど。

《ごめんね、由衣子。自分の恋を優先するのはあたしに取っての正義だから》

「……うん、そうだね。それは否定できないよ。私だって、紘子の恋路を邪魔したいわけじゃないもん」

 そういったのは本心からだった。私のせいで紘子と慎一郎さんの関係が上手くいかなくなるのはいやだから。

《なら、双方合意ってことでいいね》

「仕方ないけど、そうだね」

 私は頷きながら言った。

「すぐにでも部屋探さなきゃだよね。どこかに格安物件ないかな」


 私は紘子の聞こえないように小さなため息を吐く。まだしばらくは紘子のマンションにお世話になろうと思っていただけに、このショックは大きい。


 《どこのエリアに住むかにもよるんじゃない。このまま游さんのアパートに置いてもらえば。もちろん、家賃折半で。そうすれば游さんだって、家賃浮いたら嬉しいはずだし》

 紘子はとんでもないことを言いだした。

「も~う! 他人事だと思って」

《だって他人事だもん。あたしもマンションから今すぐに出て行けとは言わないけど、できるだけ早くお願いね》

「……了解。それで、慎一郎さんはいつまでそこにいるの?」

《日曜の夕まで、かな》

 ということは、日曜の夜までは紘子の家には帰れないということだ。

「分かった。じゃあ、日曜の夜に帰るわ。後でまた連絡する」

 電話を切るとベッドにゴロンと横になり手にしていたスマホを放り投げた。

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