一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「由衣子ちゃん、起きて」
肩を揺すられてハッと顔を上げる。するとボート降り場まで来ていた。係りのおじさんがボートを引き寄せながら笑っている。
「すみません! つい、気持ちよくてねむっちゃいました」
勢いよく立ち上がると、ボートがガタンと揺れた。
「危ない!」
游さんはお馳走になった私の体をとっさに私を抱きよせてくれる。
「セーフ」
「すみません、私!」
「大丈夫だから、それ以上動かないでくれる?」
確かに、変に動くと游さんもろとも池に落ちそうだ。
「はい、わかりました」
私が返事をするのを待って、游さんはゆっくりと体勢を立て直す。それから私を抱きかかえたまま桟橋へ上がった。
「游さん!」
「だから、動かない!」
目の前にいるおじさんはもちろん、周りの人たちの視線が痛い。恥ずかしい。でも、少し嬉しい。こんなことしてもらうことなんてなかったから。