一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
携帯と財布、化粧ポーチをいれたサブバックだけを持って、事務所へ向かう。中に入ると灰色のデスクが六つ向かい合わせに並んでいて、奥には応接セットが置いてあるだけのシンプルな事務所だった。
「着替えたね。そこにいるのがセンター長の広崎さんだから自分で挨拶してくれる?」
指示されたところにいたのは、中年太りの男性。ワイシャツネクタイスラックス。上着だけ作業着。デスクの椅子に座りスポーツ新聞のお色気記事を凝視しながらお茶をすすっている。セクハラで訴えられるレベル。本社には絶対にいない人種だ。
私は近くまで行くと、若干の距離を置いて声を掛けた。
「おはようございます。本日からお世話になります、天野由衣子です」
少し間を置いて、センター長は私の方を見た。足元から舐めるように視線を這わして、胸元でため息を吐く。
「そうか、今日からリカちゃんいないのか」
「リカちゃん?」
誰だろうと思い聞き返すと、またため息を吐かれる。
「……ハァ、おじさんの愉しみ奪うなよ。せめて巨乳だったらよかったのに」
センター長はそれだけ言ってまたスポーツ新聞に目を向けた。
「巨乳?」
私は呆然とその場に立ち尽くす。
「ほら、挨拶が済んだんだからこっち」
蓬田さんは私の腕を掴んだ。
「え、え?」
訳が分からないまま、給湯室に連れ込まれる。