一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
「怒らないであげてね。悪い人じゃないのよ。仕事は出来る人だし、社長も一目置いているの」
私を諭すように、蓬田さんは言った。
「ああ、はあ」
悪い人というか、ずいぶんと失礼な人だと思う。
「ひとついいですか?リカちゃんって……」
「あんたが来るからって切られた派遣の子。グラビアアイドル目指してるとかで、胸の大きいかわいい子だったのよ。センター長のお気に入り」
……だから巨乳ならよかったのにっていったんだ。
「そうだったんですね、……って私が来るから切られたってどういうことですか?」
私は部長から急に一人辞めることになったからその補充だと聞かされていた。それだと話が違うではないか。
「なんだっけ、ほら、本社の人事と営業の西尾さんがきてひとり出向させたいから人員調整が必要だとか何とか言ってリカちゃんと面談していったの」
人事と聞いて思い浮かぶのは、隆と同期の横澤さんだ。彼もやり手と言われていて、派遣従業員の管理をしていると聞いたことがある。
「その人事の人って、眼鏡かけてる背の高い人?」
「あーそうそう。綺麗な顔しててあんまり笑わない感じのね」
「……やっぱりそうだ」
全てがつながった。隆は私を営業部から追い出すために人事の横澤さんと共謀してここの派遣事務員を辞めさせたのだろう。若い女の子を言いくるめることなんていくらだってできる。
彼女がうんと言えば、本社には違う報告を出してしまえばいいだけの話。後は、手薄になったセンターに正社員を送り込む必要があるとかなんとかそれらしいことを言ったのかも知れない。
不思議と怒りは湧かなかった。それを通り越して呆れた。隆ってそんな男だったんだと知れば、別れて正解だったと思える。
「教えてくれてありがとうございました」
丁寧にお礼を言うと、蓬田さんは少し戸惑ったような表情で頷いた。
「ああ、そう。お役に立ててよかったわ」