一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
その日の夜、遅く帰ってきた游さんに私はもう少しここに置いてもらえないかと聞いてみた。
「僕は構わないけど、由衣子ちゃんはそれでいいの?」
「いいというか、私としては、早く出て行かなくてはと思ってます」
「そっか、そりゃそうだよね。こんな古いアパートに好きでもない男と二人暮らしなんていやだよね」
「そう言う意味じゃないんです!」
私は慌てて否定した。游さんは私にとって好きでもない男ではない。
「私はただ、游さんが迷惑してるんじゃないかと思うから」
「だから出て行くの? 僕は別に迷惑だなんて思ってないよ。いて構わない。むしろ君にいて欲しい」
「本当に?」
「うん、本当に。だって、由衣子ちゃんがご飯作って待っててくれるから帰ってきてるようなもので、それまでは僕、職場に寝泊まりするような生活だったんだよ」
「そうなんですか?」
仕事を掛け持ちしているのは知っていたけれど、それほどまでとは思わなかった。
「そうそう。ちゃんと毎日帰ってくるような部屋なら、もう少しいいところに住むと思う。そうおもわない?」
確かにこのアパートは古いだけあって色々と難ありだ。壁が薄いのも、隙間風が入るのも、シャワーの水圧が低いのも、ゴキブリが出るのも、みんな困ることばかり。住んでみてそう思う。