一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~
《もしもし、由衣子?》
隆の声が私の名前を呼んだ。游さんに聞こえてしまわないようにスマホを耳に押し当てる。
「……はい。なに?」
《なにって、さっき電車で俺のこと無視したろ》
「別に無視したわけじゃないけど。用件それだけなら切るよ」
私は少しでも早く電話を切りたかった。游さんの目の前で元カレである隆と電話なんてしていたくない。
《待てよ! なあ、お前今どこに住んでんの?》
「どこだっていいでしょ」
苛立つ私に隆はとんでもないことを言ってきた。
《今度、会わない?》
「なんで?」
《なんでって、会いたいから》
「ふざけないで! 浮気してふっておいて、いまさら会いたいだなんて言わないで!」
思わずそう口に出してしまった。ハッとして游さんを見る。游さんは私をみつめていた。そして私の空いている方の手を握って、そっと唇を近づける。
「……あ」
《あ? お前今、なにしてんの》
「なにって、なにも」
游さんは戸惑う私を見ながら指先を軽く噛む。とっさに手を引っ込めると、游さんに背中を向けた。すると游さんは私を後ろから抱きしめて耳元で囁く。
「話し、続けていよ」
続けていいいだなんて言いながら、游さんは私の邪魔をする。上着の裾から手を指し入れてブラジャーのホックを外した。
「やっ、だめ」
《おい、由衣子!》
「ごめん、隆」
私はたまらずに電話を切った。それと同時に游さんは私から離れて、丁度沸いたお湯をティーポットへ注ぐ。
「遊さん、なんでこんなこと……」
私はブラのホックを留めながら、游さんに詰め寄る。でも、游さんは素知らぬ顔で私の言葉を遮った。
「僕紅茶ってあんまり飲まないけど、いい香りだね」
「游さん」
「ほら、座って。食べるんでしょ? シュークリーム」
「……食べます」
上手くごまかされてしまったようだけど、妬いてくれたってことでいいんだよね?
私は游さんの入れてくれた紅茶を飲みながら、甘いシュークリームを頬張った。