一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

「美味しい!」

 思わず漏れた声に、游さんは満足そうにほほ笑む。

「そう言ってもらえてよかった、並んだ甲斐があったな」

「これで明日も頑張れそうです、仕事」

「こんなのでよければ、いつだって買ってきてあげるよ。ほんと、由衣子ちゃんって欲がないんだね」

「……欲、ですか?」

 私は小さく首を傾げる。

「うんそう。この間って、どこかでかけようって言ったらピクニックでいいって言うし、外食とかもしたがらないでしょ?」

「まあ、そうですね」

 全ては游さんのお財布事情を考えてだったんだけど、今は少し違う。

「游さんとなら、なんだって嬉しいんですよ」

 私の言葉に游さんはハトが豆鉄砲を食らったような顔をしていた。そんなに意外?ていうか、今までどんな女の子と付き合ってきたんだろう。

まあ、私も游さんに出会う前まではピクニックより、外車でドライブの方が良かったし、定期入れよりもバックかお財布の方が嬉しかったし、シュークリームよりも高級ディナーの方が食べたかった。

でも、今は游さんとならなんでも特別って思えるんだから不思議。

「このままの游さんでいてくださいね」

 笑顔で残りのシュークリームを頬張ると少しぬるくなった紅茶を飲み干す。

「……うん」

 游さんはどこか浮かない顔をしていた。でも私は、それを気に留めることもなかった。

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