運命の恋、なんて。
ソファに座ると、ちょうど隣はニット帽を被った男の子。



あたしを挟み頭越しに、ピアスくんと話し始めた。



「八雲~、お前絶対逃げたと思った」



「なんだよ、逃げねぇよ」



逃げる?



そして、ピアスくんは八雲(やくも)くんっていうんだ。



ノンちゃんの歌声をバックに、ふたりのやり取りをじっと聞いてしまう。



「次歌わされるからなー、曲選んどけよ」



「あー、イヤだ。そうだ、胡桃ちゃん歌って。俺の代わりに」



いきなり、八雲くんに話を振られた。



「あたし…歌は、苦手で」



「そう言わずに。俺、胡桃ちゃんの歌聞きたいな」



ドッキーン!



イケメンの破壊力、ハンパない。



あたしの決心、見事に打ち砕かれた。



「う、歌います」



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