スキorキライ
保健室で
~健二side~

美咲ちゃんを助けた。

今、この手で。


僕の心にはいま、美咲ちゃんを心配する気持ち、美咲ちゃんを初めてこの場で助けられた喜びなど、様々な感情が入り乱れていた。

そして、さっき僕は美咲ちゃんの手を初めて握ったのだ。
そんなことを言っている場合ではないと思うけれど。

「ねえ、顔色悪いよ、大丈夫?」

複雑な心が顔に現れていたのだろう。
保健室の椅子に座った美咲ちゃんが心配して声をかけてくれた。

「うん、大丈夫。心配かけてごめん。でも、美咲ちゃんのほうが大変じゃない?」

「っ!だ、大丈夫」

美咲ちゃんは強がっているが、いじめている女子に蹴られたり叩かれたりした部分が痣になっている。
時々、痛みを耐えるような表情を見せている。

「蹴られたとこ、痣になってるでしょ。ちょっと見せて」

美咲ちゃんは一瞬抵抗したが、痛みに耐えられなかったのか傷を見せてくれた。

「うわ…、これは酷い…」

蹴られたり叩かれたりした部分を中心に濃い青色の痣が広がっている。
あいつらは加減というものを知らないのか。
まあ、それ以前に暴力を振ることは人としてあり得ない行為なのだが。

「早く手当てしないと」

僕は棚からアイシングバッグを取り出し、痣を冷やす。
その途中に擦りむいた部分を見つけたので、消毒液で脱脂綿を濡らす。

「ちょっとしみるかも。我慢してくれる?」

美咲ちゃんが頷く。

僕は慎重に消毒し、絆創膏を貼る。

一方の美咲ちゃんは消毒液が傷口にしみたのか、苦しげな表情で貼られた絆創膏を見つめている。

「ごめん、痛かったよね」

そう言って僕は美咲ちゃんの頭を撫でた。
頭を撫でたのは完全に無意識で自分でも驚いてしまった。

嫌がられてしまったかな、と美咲ちゃんの顔色を窺うと、美咲ちゃんは頬を赤く染めて恥ずかしそうに俯いていた。

やっぱり調子乗りすぎたかも!

「ご、ごめん!無意識で!」

「…え?あ、ああ!いいの、大丈夫!」

美咲ちゃんはそう言ってるけど、大丈夫だろうか。
心配だ。

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