初めましてこんにちは、離婚してください 新装版
『説明も聞かずに出て行く奥方様も奥方様だけど……まぁ、それだけショックだったんだろうね。もう少しで粘り勝ちできたようなこのタイミングで……ほんとお前はどうしようもない馬鹿だね』
天宮は何度も「馬鹿」と繰り返すが、高嶺は意味がわからない。
「翔平、俺にわかるように説明しろよ……」
そこにいるのはタカミネコミュニケーションズのCEOではなく、ただの男だった。
『だからさ、マサは商売においては天才だけど、人の気持ちを想像する能力に決定的に欠けてるんだよ。俺は付き合い長いからわかるけど、普通はこれ、揉める種にしかならないの。たとえ嘘八百でお前にとってはどうでもいい話でも、お前に関わる人にはどうでもよくない話なんだよ。だからお前には、莉央さんにすぐ説明する義務があったの』
「すぐ……?」
『そう。普通は傷つくんだよ。マサ……だから莉央さんはいなくなったんだ』
まるで子供に言い聞かせるような声で、天宮はため息をついた。