初めましてこんにちは、離婚してください 新装版

 呆然と立ち尽くす高嶺の様子をおかしいと思ったのか、電話の向こうの天宮がハッキリとした口調で言い放つ。


『荷物はどうなの?』
「荷物……わかった」


 さっきも見た、莉央が使っていたゲストルームに飛び込む。
 クローゼットを開けると、なに一つ入っていない。


「トランクもない。なんでだ」
『ああっ……もうっ!』


 明らかに苛立つ天宮が、吠えるように叫んだ。


『マサ、奥方様にちゃんと説明した!?』
「は?」
『あのクソみたいな記事だよ、嘘100パーセントだけど、マサが説明しなきゃ奥方様信じちゃうでしょ!』
「……」
『おい、しっかりしろ! お前の人より早く回転する悪魔的な脳みそは飾りか!?』
「悪い、聞こえてる」


(莉央があのでたらめな記事を信じた? 信じて、出て行った?)



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