ハウトゥ・シナプス
「……お前、マジでなんなの」
「はい?」
「つーかまず何その話し方。敬語とかこわい。きもい。口の悪さどこいったんだよ、何企んでやがる腹黒女」
……それにしてもこの男、口が悪すぎやしないか。
机に身を乗り出してギロリとこちらを捉える目。動きに合わせてさらっと髪が落ちる。ふわり、また彼のにおい。
「別になにも企んでません。敬語は気分です」
「嘘つけよ」
私が口を瞑ると、相手も口を結んだ。不機嫌そうなその形のいい唇は、あからさまにへの字を描いている。
分かる。分かります。確かに、不機嫌になる気持ちも。
なんで私はこの人と付き合ってたんだろう。
なんでこの人は私と付き合ってたんだろう。
「……黙ってれば顔はいいのになぁ」
「あ゛ぁん?」
黒髪の隙間からのぞく切れ長の目と、鼻と口のバランスがべらぼうにいい。
それなのにそうやって強い言葉を発するから目つきが悪くなって口元がゆがんで眉間にしわが寄るんだ。
だから人相が悪くなる。
「何なんだテメェは昔っから黙ってろ黙ってろってよぉ。喧嘩売ってんのかあぁん?」
そして元カノに対してこの態度だもんな。