E・N・M・A~えんま~
母が驚くのも当たり前かも知れない。
いつもならとっくに帰っている時間帯だから。
記憶をたどると、脳裏でフラッシュバックするのは銀色の髪の美しい彼ーー。
「…千夏?……なにかあった?」
心配そうな母の顔を見ると、頭を髪の毛ごとプルプルと振る。
肩口まである黒髪が、一緒にさらさらと風をはらんで揺れた。
「ううん!分かんない所があって、やり方教えてもらってたんだっ」
ぺろっと舌を出して、
「あぁ、お腹すいたぁ~!!」
心配げな母の顔を横目に、玄関のドアを開け放つとカレーのいい匂いが空腹を増してくれた。