E・N・M・A~えんま~
不思議なことに恐怖はわいて来なかった。ただ、懐かしいような香りに包まれている、そんな感覚しかなかった。
「ううん、寒くない」
そう答えながらふと思う。
あれ?
今は頭の中で響く声じゃないみたい。
音として耳から言葉が入っている。
背後には相変わらず先ほどと同じように彼がいて、たくましい腕がワタシの腕を抱いていた。
「あのう~・・・」
「なんだ?」
「は、離れてもらえませんでしょおか?」
我ながらおかしな言葉遣いだと思いながらも、急に気がついてしまったのだから仕方ない。彼に背後からとはいえ抱きしめられていることに・・・。