film

大きな窓のある浴室のバスタブに浸かりながら、
彼のたてるシャワーの音を聞きながら、
外で風に揺れる一本の木を見ていた。
このまま誰にも気づかれることなく、消えてしまいたい。
そんなことをふと思った。


「髪のびたね」

体を洗い終わった彼が私に向かい合うように湯船に浸かる。

「出会った頃に一度ショートヘアにしたじゃん。それ位にまた切ったら?」

結んでいたヘアゴムを取ると
髪は鎖骨まで達していた。

「じゃあ、今度の休みに切ろうかな」

私がそう言うと、
彼は満足げに微笑んだ。

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