悪魔な彼が愛を囁くとき

はい?

ムリ…ムリ…
左右に首を振りながら仁を見るのに

「ほら、口を開いろ…」

なんの羞恥プレイなの⁈

仁から降りようとする腰を片腕でガシッと捕まえられて、もう片方の手がカウンターテーブルの上からクロワッサンを取り、口元に持ってくる。

ゴクッと生唾を飲み込み、羞恥に震える。

私が食べるまでこのままだ…

おずおずと大きな口を開きクロワッサンにかじりつく。その時、男の指先が唇に触れ羞恥に頬が染まる。

そして、残りは自分の口の中へ運び、ぺろっと指先を舐める。その姿に更に羞恥心が増してしまう。

お互いにモグモグと咀嚼し、次に運ばれてくるのはスプーンの上に乗ったスクランブルエッグ。

ふわふわでとても美味しそう。

一度、動き出した胃は空腹を満たそうと食欲が湧いてくる。

自然現象には勝てないと諦め、パクリと勢いよく口の中に…

見た目通りのふわふわ感にバター風味で、塩胡椒もいい感じ。

「……美味しい」

「だろ…」

してやったり顏の男は、同じスプーンで自分もスクランブルエッグを食べだす。

間接キッスだ…

これはなにかの罰なのか?
恥ずかしくて耐えられない。

今度は、摘んだプチトマトを唇に押しつけられ、スルッと口の中に。

それは、プチトマトのマリネだった。
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