最果てでもお約束。
過去とは戦わない、抱き合うモノだろ。
「へー、運動会で最下位かぁ・・・」
豆球の明かりのみの部屋でアキラがうんうんと頷く気配がする。
ついついアキラをゆうと呼んでしまってからは、ゆうについての質問攻めが続いている。これなら豆球にしなくてもよかったんじゃないか・・。
「あいつのせいじゃないよ。あいつのクラスが全体的に能力が低かったんだ」
小学校の先生がわざわざ一年に一回しかない運動会の為に身体能力のバランスを取ってクラス分けをするはずが無い。
「いやぁ、オレも最下位になった事があってねぇ、なんか思い出したぁ」
幸か不幸かぼくにはその経験が無い。一番だった経験もないけれど。
「ぼくが同じクラスだったらな。絶対あいつの後を走って一人くらいは抜いてやれたのに」
「こうはさ、なんかやたらと庇うね」
「あい?」
なんだなんだ。今までの会話でいつぼくがあいつを庇ったってんだ。
「いやほら”抜いてやれたのに”ってさ。なんか”取り返してやる”みたいな?」
言わんとする意味がちょっとわからない。
「だーかーらー、落ちた順位又は上がらない順位をこうがそのゆう君に代わってなんとかするーみたいな」
あ、理解理解。
「それのどこが庇ってんの?」
「要はゆう君に出来ない事をこうが代わりにやるって事でしょ。ほらー庇ってるー」
顔を見合わせて会話なんてしない。ほら、男同士気持ち悪いから。
「あー・・・そうなんのかな?」
昔からそうだった。ゆうが出来ない事はぼくがやる。ぼくが出来ない事はゆうが協力してくれる。庇うとか庇わないとか、そんな事意識もしなくなっていた。
「その運動会の話にしても、さっき言ってた小学校に侵入して警備員に追いかけられた話にしても天体観測しに行った時の話にしても。全部どこかで何か庇ってるね」
「っつってもぼくだって相当庇ってもらってるぞ。宿題とかわからない答えとか客観的な意見とか」
別にぼくばかりが庇っていた訳じゃない。同じくらいゆうにも庇ってもらっていたと思う。
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