最果てでもお約束。
「いやー・・・爽快」
「・・・・・・・・・・」
あ、ちょっとヨダレでてる。
「う・・・ううう」
「ううう?お、おい?」
マズイ。ちょっと刺激が強すぎたかもしれない。
まさかこれで頭がアレな事に・・・。
「うそつきー!!!!!!」
「おおおおぅ!?なんだよ!びっくりさせんなよ!」
ケンカ雲、というのを知っているだろうか?
往年の名作漫画やアニメでみられる、ケンカが土煙でみえなくなっているヤツ。
そうそう、たまに手や足や星だけが見え隠れするヤツね。
それを生まれて初めてやってしまった。
同じ歳、同じような体格では勝敗は中々つきにくく、結局お互いの体力がカラになって終了。元々憎しみから始まった事じゃ無かった。ゆうにしてみればショックで、ぼくにしてみれば防戦していたに過ぎない。仲直りの必要すら無かった。
「ね・・ねぇ・・・暗いけど、帰り道わかるん?」
「知ってたか?ぼく引っ越して来たんだ」
全然わからなかった。目の前には今にもぼくらを喰ってやろうかと思わせる真っ黒な山。振り返って見てもおそらく自宅のある場所であろう町の輝きはひどく遠く見え、右も左もよくわからない少年達の心をじわじわと蝕んだ。
見ればゆうはすでに山も町も見ず、ただ地面とその間で組んだ指をじっと見ている。
さっきまで元気だったゆうが、出会ったばかりのようになってしまった。
これは良くない。
何が良くないのかはさっぱりわからなかった。今でもよくわからない。
けれど、ここでゆうに何も声をかけないのは、まるで・・・もう明日が来ないように思えたのだ。
「おぃおぃ、だーいじょぶだって。ぼくの後ろに乗ってれば万事問題無し」
「絶対乗りたくない」
即答だった。
ま・・まぁあのような体験は生まれて初めてだったろうし、この今の状況も生まれて初めてだろう。ははん、ぼくは初めてじゃないぞ。なんせ躾と称して親に夜の山奥に置いていかれた事だってあるんだからな(泣)
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