最果てでもお約束。
再生と旅立ち。
「まぁ、こんなもんだろう」
か、ちんと音を立ててその空気も凍る刃を鞘に収めた彼。
彼の前にはさっきまでぼく等を追ってきていた男3人が地面に呻き声1つあげずに伏せている。
そのまま視線を左前に。
「今回は飛び道具を使ってくる奴はいないんだな」
一目見ただけで周囲に敵意が無くなった事を知る。
「最初にぶっ倒した奴が飛び道具使いでした、そのハゲ」
もう声すら上げないから強気のぼく。へへ、なんてことねぇぜ。
「・・・・起こすか?」
身振り手振りで”こいつ起こしてアソコから何か撃たすか?”と伝えてくる彼。
「・・・・・結構です」
丁重にお断りしておく。もしぼくが撃たれたらどうすんだ!
「といいますか、ならそいつは軽傷です?」
起きたらすぐに物を投げたりできるような状態で倒すなんて、あの頃とは違ってもはや達人の域に達している。
「いや、コレで本気で叩いた。またアレになってるだろ」
あー・・なんだったかなと言葉を思い出そうとする。
「・・・半身不随ですか」
前回ぼく等を襲っていた奴等の中で最初に倒された男。その男は運悪くたまたま彼の目の前にあった首の真裏を鉈の背で思いっきり殴られた。
そのせいで今でも半身不随で生活する破目に陥っている。
「あ、それだ。また1つ教わったな」
にっこりと笑う彼。左足に今回倒した2人目の頭を下に敷いたまま。
「・・・ところで」
そのまま右足を上げて、一歩踏み出す。軸足になっていた左足が敷いてあった頭の髪でずるりと滑った。
「お前、大丈夫か?」
ぼくの肩越しに声をかける。そうだった、あまりにも前回と状況が同じなのでアキラの存在を忘れていた。
「だっ・・だだ・・・」
今にも舌を噛みそうなアキラの声。無理もない。説明も警告もしなかった。彼の目は今、あの日のような凶灯を灯している。まともな人間なら、その眼力には耐えられない。
「・・・ぃっしょー!」
べき。何かを殴る音。振り返ると、自分の右手を自分の右頬にぶつけたアキラがいる。
「・・・・?」
理解不能。その威力の程は知れないが、少し涙目になっている。
「・・・あっしたー!!」
がばっと頭を下げるアキラ。まさか今のは・・・
「ありがとうございました?」
下がっていた頭がより一層下に下がり、下りた時の倍の速度で跳ね上がった。
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