最果てでもお約束。
「こう!ちゃんと感謝しないと!」
ぐぃとぼくの頭を掴む。
「あ、う・・・うん」
素直に下げようとすると、今度は下顎にやたらとゴツゴツした手の感触。
「あ?」
その手の手首からずんずんと視線を上に上げると、どうやらぼくの顎は彼によって完全に掴まれているようだった。
「例なんていらん。頭も下げる事ない」
ぎりぎりぎりと万力のような力で締め上げられる。
「ぐ・・・う・・・」
そのまま元の姿勢まで戻されて開放されると思っていた。
「いえそんな!!せめてありがとうくらい!」
その目算を砕いたのはアキラ。押さえたぼくの後頭部を下にやる力を緩めない。
「む・・・ぐ・・?」
どうやらぼくの頭は今2人の人間によって挟まれているらしいたいたい!
「しかしな、ただ感謝してもらうというのも・・・」
「いえ!この恩は・・・」
「むぎゅる・・・」
アキラは体力も力も無い方だ。しかし、これはどうなっているのだろうか。
あの彼と力で均衡している・・・・。
まぁ彼はまったく本気では無いし、アキラは本気だしで丁度力が拮抗しているのだろうなぁと考えているのも痛い!
「ごりゅあぁぁぁぁ・・・」
2人に頭と首を捕まえられている為に『こりゃー!』と怒鳴れもせず精一杯でこんなもんです。
「偽りんごジュースになるからさ・・そろそろ勘弁して・・」
ぼくのあまりにもか細い声が届いたのだろうか。ぼくの頭と首から手が消えた。
一瞬で歯のかみ合わせが悪くなったような気がする。
「アキラ・・・今度からはぼくが自分でやるから・・・」
勝手に人の後頭部なんて持たないように・・・と言おうとして気がつく。
あの2人がいない。
一瞬で左右の確認。いない。なんて事だ。彼ならわかる。用が済めば名前も名乗らずにひゅうといなくなる人だ。
しかしアキラは。この町の怖さを今さっき肌で感じたアキラが、最早この町を1人では絶対に歩かないだろう。
そのアキラがいない。まさか、先程の連中の応援なりなんなりが追って来て拉致された?馬鹿な。ついさっきまでアキラの手はぼくの後頭部にあった。
なら今回りにいないのはどうした事だ。
ぼくの脳はまた最高の処理能力を発揮させて考え出す。
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