最果てでもお約束。
一寸先は何?。
「うはー・・・・ごちそうさまでした」
ぱっちーんと手を合わせて言う辺り行儀は悪いのだが、まぁ言わないよりはマシなのかどうなのか。
「はい、おそまつさまでした」
ささっとアキラが食べたゴミも集めてゴミ箱に捨てる。
朝からわかってた事だが、どうやらこいつは食べたらしばらく何もしたくないらしい。
「自分で作ってないくせにー」
ひへへと力なく笑う。もしかしたら眠いのかもしれない。
「アキラ、寝るなら風呂入ってからにしろ。布団入れておいてやるから」
よっこいせと立ち上がってベランダに行こうとすると、急にアキラの目がぱっちりと開く。
「ちょ、旦那座って」
「あ?」
できれば布団の取り入れなんて面倒な事はやりたくないのだが、日が落ちてから布団を入れると布団が海風で塩っ気を帯びる。まぁぼくがその布団で寝る訳では無いからいいのだけれど後で文句を言われるのは目に見えていた。
「ななな、なんでそんな親切ですか?」
「またそれかよ・・・」
確かに、自分でもおかしいなとは思う。相手は素性の殆ど知れない旅人。
しかも働かない(まぁして欲しい事も無いけれど)
それにここまでしてやる必要があるんだろうか?
「今まで一番無欲で親切だった人は納屋を貸してくれたおじいさんだけだったけども、ここに来て大きく差をつけましたねこうさん」
納屋ってお前・・・どこをどう旅してきたんだ・・・。
「あー・・・出来れば納屋を貸したいけどね。でもほら、うちは納屋無いし」
もちろん下の階は事務所になっているから、倉庫くらいはあるけれどあそこは横になる場所も無い。
「でもほら、隣に空き部屋あるじゃん」
実は2階は合計で3部屋あり、ぼくはその真ん中を使わせてもらっている。両隣は共に空き部屋。
「目が届く所に居た方が安心できるから」
ちょっと失礼かもしれないけれど、これは事実。変に個室にしてフラフラと自由行動をされては命に関わる。いや冗談抜きで。
「ふーん・・・それにしてもさ、朝昼晩とご飯おごりですよ?もう合計1000円くらいは使ったんじゃない?」
「使ったな。なんだ?懐の心配してんのか?」
こくこくと頷くアキラ。
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