最果てでもお約束。
「見ちゃったんです・・・テレビ台の下にあるビデオの背表紙に書かれていた単語を」
「ほう・・?」
「蕾の少年」
「ぎゃー!」
いるのは知識としては知っている。そこら辺にもいるだろうとは思っている。世の中は深く汚くおぞましく、いくら差別を受けようが白い目で見られようがその趣向はコンクリートを突き破る雑草のように強力なモノである事もわかる。
が、しかし、こうやって実際の生々しい話を聞くと再認識してしまう。
それは世の中の深さだったり汚さだったりおぞましさだったり人間の限りない性欲だったりするのだけれど、どれにしたってこえー!
「こうはまさか違うとは思うけれど・・」
「やめてくれ。いや、そうだったらぼくがやめる。色々と」
本当に色々やめてしまいそうだ。街中に住むのも恐ろしい。
「よかったぁ・・・それじゃあこう、オレはお風呂に入って来ようと思いますが覗きませんね?」
「・・・・男の入浴を見てどう・・いや、いい。入ってこい・・・」
蕾の少年という単語が脳内で乱反射し、恐ろしさがまたこみ上げてくる。
「絶対!絶対覗くなよー!」
なぜか小走りで走っていく。いや、そんな急がなくても覗きはしませんから・・・あ。
「アキラ!ちょい待ち」
外の廊下を走る音が止まる。
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