ドラマチックSボーイ



「すみません、笑っちゃって。
クールって言われたのに。」


「…いや、いいんだ。
さっきの表情(カオ)、今までの笑顔とちょっと違って良かった!」


カメラマンさんの言葉に俺は苦笑した。


…やばいな、今かなり『滝沢』寄りだ。



目の前に好きな女がいると、

完璧な『蓮見』への切り替えが崩れてしまうらしい。



正直、『蓮見静』には弱点など無いと思っていた。

でもやっぱり心と体は『滝沢静』と同じ。


隙を見せると、舞が俺を『滝沢』にさせてしまう。


…俺もまだまだだな。




「お疲れ、次行くぞ。」

撮影が終わると、間髪入れずに打ち合わせを終えたばかりの賢一が次の仕事を説明する。



「…わかってる。生放送だろ?」

「だいぶ時間がおしてな。
…心の準備は出来てるか?」


まだ不安の目を向ける賢一に俺は鼻で笑った。


「ハッ…心の準備をするのは舞の方だよ。」


でも準備はさせない。

たくさん驚いて、たくさん悩めばいい。




舞に拒否権なんてないんだから………。












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