君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

「あ……」

 大きな橋に差しかかったとき、一歩前を歩く凱斗が急に立ち止まった。

 驚いた表情で、橋の下に広がる河原の方を見下ろしている。

「あ……」

 あたしも同じようにつぶやいて、ピタリと立ち止まってしまった。

 すでに日は落ち、周囲の景色は青みの強い紫色に染まっている。

 そんな薄い闇色に染まった川べりに、制服姿の女の子がひとり立って、ぼうっと川面を見つめていた。

 あたしと凱斗はお互いの顔を見合って、まるで、そうするのが当然のように河原に下りる。

 そしてその女の子に近づいて、背中からそっと声をかけた。

「中尾さん」

 振り向いたその人は、入江小花さんの親友の、中尾美弥さんだった。

 薄暗い空気のせいか、その表情からは感情が読み取れない。

 無言でこっちを振り向いた中尾さんは、あたしたちにはなんの反応も返さず、やっぱり無言で再び川を眺めた。

 川幅が広く、深さもある水の流れは、最近多い雨のせいか急ぎ足のように早い。

 中尾さんの目は、暗い色に染まった水の底にある、なにかを見つめているように思えた。

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