君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「着いたぞ。確かここだよな? お前んち」
幸せな時間は、ほんの一瞬。
あっという間に家に着いてしまった。
ああ、自宅まで歩いて10分の便利な距離が今はこんなに恨めしいぃ。
「うん。どうもありがとう」
離れたくない気持ちを胸の奥にギュウっと押し込んで、あたしは笑顔でお礼を言った。
そして凱斗の隣から小走りで門を通り抜け、背の低い庭木が並ぶ玄関に向かう。
軒下で雨を避けながら、凱斗に向かってバイバイした。
「早く玄関の中に入れよ」
「うん。また明日ね」
「いいから早く中に入れって。見送らなくていいから」
「うんうん、わかったそうする」
そう言いながら中に入ろうとしないあたしを、凱斗が笑う。
そしてあたしと同じように手を振って、帰り始めた。