君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

「けっこう雨降ってるね。奏、傘持ってきてる?」

「うん。今日はちゃんと持ってきた」

 玄関に近づくにつれて、湿り気と水の匂いが強くなる。

 制服とジャージ姿の生徒が大勢行き交う下駄箱で、あたしは内履きを脱いで革靴を取ろうとした。

「ん? あれ?」
「どうかしたの?」
「ん、靴の中になにか……」

 革靴の中に突っこんだ指先に、なにかがカサリと触れる感触がした。

 覗きこんでみたら、靴の中に折りたたまれた白いメモ用紙が入っている。

 疑問に思いながら手に取って紙を開くと、中には黒いペンで短い文章が書かれていた。

 飾りけのないグレーの罫線に書かれた文字を無意識に追ったあたしの目が、大きく見張られる。

 そこにはたった1行の、でも恐ろしく衝撃的なことが書かれていた。
 それは……。

『入江小花が自殺したのは、あんたと、凱斗先輩のせいだ』

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