シャンパントリュフはキスの魔法
 膝の上に視線を落とし、スカートの裾をぎゅっと握った。

「あの、立ち聞きするつもりじゃなかったんですけど……さっき、主任が青島さんと話してるのが……聞こえてしまって……」
「それで、俺がチョコレートを受け取らないと思った?」

 私はこくり、とうなずいた。

「ここにいるから、たぶん聞こえたんだろうなとは思った」

 主任に言われて、今度は罪悪感で頬が熱くなった。

「それで、そのトリュフをひとりで食べようとしてたってことは、本当は俺のために用意してくれてたんだとうぬぼれてもいいかな?」

 今さらごまかせず、私は小さくうなずいた。

「河村にはいいところがたくさんあるよな。仕事も一生懸命でがんばり屋だし、残業のときにさりげなく差し入れをくれるところなんか、気遣いのできる女性なんだと思ってる」
「ありがとうございます……」
「でも」

 主任に逆接の接続詞を言われ、私は右隣を見上げた。主任が口角を片方上げて言う。

「早とちり、だな」
「早とちり……?」
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