begins fate
~時は16年前に遡る~

王国は歓声で賑わっていた。
この国の国王と王妃に待望の第一王子が誕生したのだった。
宴が各地で催され、国民は歌い騒ぎ国中が幸せに包まれていた。

しかし、ある一室は重たい空気に誰もが難しい顔を崩せないでいた。

「国王、申し上げにくいのですが…
王妃様に第二子は難しいと思われます」

白衣を身にまとった医者は国王を真っ直ぐ見つめハッキリと宣言した。
それを聞いた国王は覚悟していたのか下唇を噛み締めてゆっくりと頷いた。

「やはり、妾をとられた方が…」
「いや、妾はとらない」
「ですが、国王!生まれたのは姫です」
「わかっている」
「……?」
「王妃が回復するのを待つ。あいつ以外と愛を交わす気はない!」

子は生まれた
待望の第一子は、姫だった。
しかし、王妃は体が弱く次はない
それでも国王は王妃の回復を待つ決意をしていた。

「しかし、王妃様の体が必ずしも回復するとは…」

国の未来を見据え、医者は国王の側近に目配せをしたが
側近は目を閉じてじっと国王の言葉を待って動こうとも、口を開こうともしていなかった。

「あいつが回復するまで、姫を王子として育てる。そのまま王妃か私、どちらかが逝く様ならばあの子が次の国王となる」

国王の高らかな宣言に医者は目を見開いた。
側近と国王を交互に見ながら開いた口をなんとか動かし抗議を並べようと立ち上がったが、声を発する前に国王は右手を出した医者の発言を止めた。

「これは国王としての決定事項だ」
「!!……承知いたしました。」

こうして、セナは姫でありながら王子としての運命を歩み始めたのだった。

この医者は今、セナの良き相談相手になっている。
セナにとって、成長と共に女性化していく体と、王子でいなければならない心の均等を保つ大切な支えとなっているのだった。
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