迷い風
駅の古さとは対照的に
駅構内には思ったより多くの人がいた
恰好やキャリーバックを見る限り
ほとんどは観光客だろう
電車の中にいる人が少なかったせいか忘れていたけど
この町は最近海がきれいな穴場スポットとして注目されているのだ
駅員さんに大体の場所を聞いて
私は[希望宿屋]の場所を探した
スマートフォンの地図アプリで探せばすぐにわかるんだろうけど
今は取り出す気にもなれない
そして今はなんだか気分がいい
新たな町に来たからか
もうあの現実に戻らなくていいからかわからないけど
探せば見つかる気がした
駅を出て
ようこそ青昌へ
という爽やかな青色の文字を見ながら
私はこの町の奥へ奥へと進んでいった
お気に入りのキャリーバックは泥で汚れ始めていたけど
そんなことは気にもならなかった