魅力的なアナタが好きです。
「お疲れーっす、神崎さん」

「……お疲れ、佐々木。今日は柳じゃなかったか?」

「風邪かと思って病院行ったらインフルだったみたいで暫く来れないとか」

「わかった。絶対に店に入れるなよ」

「俺も移されるのとか御免被りたいんで賛成っす」

「僕が突っ込みたいのは、せめて連絡事項ぐらいはちゃんと耳に入れて欲しいってことかな、神崎……」

「ん、ああ。悪い」

「書いとくね、ボードのここに書いとくから、強調しとくから……」

「屋敷さんの必死さに大草原不可避」

「こいつが面白いのは昔からだ」

「面白いとかそういう問題じゃないよ、神崎……」



神崎にぬるめの紅茶を手渡すと、そのまま一気に飲み干してしまった。そのままソファーに座り込み、欠伸をひとつ、伸びを1回。

そうして、シフト表に目を向けた。




「シフトはどうなるんだ?個人経営でそこまで大きくないとはいえ、2週間程5人で回せるのか?」

「…………それが、」

「嫌な予感しかしないっすねーてんちょー」

「……今日の夜、柳と藍澤だったよな?」

「風斗くんのもらっちゃってるみたいで、」

「これだから同棲中のカップルは…。喧嘩してる時も大変だったよな、事あるごとに店の雰囲気が修羅場だっただろ、キッチンに居ても感じ取れたぞ」

「そうっすね、とりあえずリア充爆ぜろみたいな」

「それとこれとは話が違うと思うんだが」



僕は勿論、店が開いている時はほぼ居る。
神崎は常にキッチン。
唯くんはこれ以上シフトを増やしたら休みが無くなる。この店の定休日とシフトが入っていない日は勉学をしながらなるべく日払いで他のバイトをしていると聞いているし、桐野さん、は……大学の春休み中だ。
けど、彼女にも都合というものがあるだろうし、シフトを詰めてくれたとしても欠員ふたり分の仕事量は埋められない。


そして、更にこういう時に限って。





「……今日発売された雑誌に、ここが紹介されてたって友人の何人かからラインが来てました」



そう言って、場の雰囲気を読んでか、静かに控え室に戻って来た桐野さんは雑誌を僕に手渡した。
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