俺は絶対好きにならない
体育の時間
日向高校の体育は個人で選択したものを授業の中でできる
しかも、体育は他のクラスと合同で行っている
俺たちのクラスは彩羽のクラスと合同で行っている
ただ、体育は男女別々で行う

俺はサッカーを、ルイはバドミントンを取っているので外の競技と内の競技では会うことはない

「慶介ー、早くいこうぜ」
「おぅー、んじゃ」
俺は早々と着替え、サッカー選択者とともにグラウンドへ向かう
サトはのろのろと着替えて、体育館へ向かった

「今日の体育は、1学期もあとわずかだからダブルスを試合形式で行う」
そういって、先生は勝手にくじでペアを作り、試合を始める

ルイがペアになったのはサトだった

慶介はサトと部活が同じこともあって、よく一緒にいる
そのため、何度かルイも話したことがある

「ルイ君、宜しく」
「こちらこそ宜しくお願いします」

いつも慶介がいるから、2人きりとは変な感じだ

バドミントンは選択者が多いのでなかなか順番が回ってこない

「今日は、彩羽ちゃんお休み?」
「うん」
「そっか」

最近の彩羽は休みがちで、学校へ来ても塞ぎがちだ

「慶介とはどう?
どうって聞けるほど俺も深い仲ってわけじゃないけど」
「仲良くやってるつもりだけど、、、 」
「時々、あいつおかしいもんな」
「うん、、、 
サトは、けーすけとは高校からの一緒なのか?」
「中学から一緒だったよ
中学は、特に仲良かったわけじゃなくて、顔見知り程度だったけど」
「こんなこと聞くの絶対間違ってるって、直接、けーすけに聞くべきなんだろうけど聞いてもいいか」
「あー、慶介と彩羽ちゃん?」
「七夕祭り」
「ほんと、俺に聞くのは間違ってるだろうな
陰で人のこと噂するの嫌いだし
でも、慶介に聞いても絶対答えないだろうからな」
「うん、、、 」
「俺が知ってる限りの情報でもいいか?」
「少しでもいいんだ、興味本位とかそんな単純な気持ちじゃなくて、2人の近くにいるのに何も知らないって凄く悔しい
知らないから何もしないは、ただの卑怯だ
知ろうとすることへのただの逃げだと思うんだ、俺は
聞かないことで相手が守られるんじゃなくて、聞いた後の知ってしまったやつの責任を背負う自信がないだけなんだ
オレは知らないまま付き合っていくんじゃなくて、責任を背負ったうえで付き合っていきたい」
「うん、ただ俺は曖昧な情報は言わない」


「俺は中2のとき一樹っていう男子と同じクラスになった
最初の頃は、時々休んでいたけど、普通に学校に来てたんだ
5月くらいから一樹は病気であんまり学校に来られなくなった
クラス委員の俺は、見舞いにいったり、家にプリント持っていったり一樹とは割と交流は深かった
5月以降、稀に一樹が学校に来ると、他のクラスから走って駆けつけてくるのが、彩羽ちゃんと慶介だった
3人は傍からみても凄く仲が良くて、完全に3人の世界が出来上がっていた
6月入って完全に一樹は来られなくなった
時々、ちょっとの外出はしてたみたいで、3人で歩いているのを見たって話も聞いたことはあった

そして、七夕祭りの7月7日、一樹は亡くなった」

ざわめいてうるさいくらいの体育館が一瞬なにも聞こえなかった
「亡くなった」という言葉が鮮明に聞き取れて、ルイは恐怖を覚えた

「2人の中で一樹という存在はあまりにも大きすぎた
与えられたものも多かった分、失ったものも多すぎたんだ」
「一樹、、、 」
「俺が知っているのはここまで
ほんとに傍観者の目線からしか言えない」

ルイは、ただただサトの話に飲み込まれるばかりだった

「2人に関しては掘れば、まだ出てくると思う
付き合っていくからには、逃げたくないならとかの安い覚悟はいらない
ほんとの覚悟が必要なんじゃないかな」
「、、、 」
「俺は、今、慶介と一緒にいること多いけど、3人のことを受け入れる覚悟がないから、絶対の傍観者でいる」

サトは決して入ってこようとはしない
3人の介入は決してしない

それは3人でいる姿を見たことのある人だからなのだろう

「ルイ君、会ったこともない一樹にルイ君がなれるはずもないんだよ」

その言葉は、励ましなのか皮肉なのか、それとも両方なのか、ルイにはわからなかった

ルイたちの前の試合の終わりの音が鳴る
「ルイ君、試合だよ」

あまり時間は立っていないはずなのにルイにとって、今の時間はとてつもなく長く感じられた
「聞いてしまったやつの責任を背負う」
さっきの自分のセリフが怖いくらいに自分を脅かす

ルイは受け止めたいと思う気持ちは自分のなかに確実にあるが、本当に責任を背負えるのか不安だった



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