[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。
「もう無理だよ」
つい、そんな弱音が漏れる。
忘れたくて逃げてきたのに、やっぱり根底にあるそれを置いては来れなかったみたい。
「だから、もういっぺん頑張ってみろって。それが嫌なら諦めろっつってんの」
「簡単に言わないでよ」
「簡単じゃねえってわかってるから、今ここにいるんだろーが」
心底不満げにむくれながら、功がわたしの頭を小突く。
わかってるよ。
全部全部わかってるから、その上でわたしの無茶な計画に乗ってくれたんだって。
自惚れなんかじゃなくて、功が今ここにいる理由はわたしのためだ。