狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~

王の獲物

打ち寄せる波のように新たな記憶を呼び覚まそうとすると…
アオイはけたたましい女の声によって現実へと引き戻された。


「きっと悠久の猫よ。上質な餌で育ったに違いないわー!」


「猫は雑食だろ」


アイスブルーの瞳のヴァンパイアらが恐ろしい会話を繰り広げる中、立ち上がり子猫を腕に抱いた赤い瞳の青年。


「お前ら少し黙れ。こいつは俺の獲物だ」


「あ、王ずるい!見つけたのは私なんですけどー!」


「味の感想お待ちしております」


残酷な言葉を口にしながら恭しく頭を下げた男と悔しそうに袖を噛んでいる女。
他の国では見られない王と家臣らの立場の違いを匂わせないやりとりはこの国独自のものなのか、この王に関してだけなのかはわからない。


ひたすら暗闇の続く廊下を歩いていく男の腕の中で、こっそりその顔を伺う子猫のアオイ。


『…どこでお会いした方だったかしら…』


キュリオとはまた違った孤高のオーラを纏うこの青年の気配にはやはり心当たりがある。
一度感じたら忘れることの出来ない…その特別な気配がしっかりとその身に焼ついている。


「…俺が気に入ったか?」


『…っ!?』


ずっと先を見つめていたと思った青年の瞳が愉快そうに細められ…その瞳がこちらに降りてくる。
凝視していたことを見抜かれていたことにも驚いたが、キュリオにも劣らぬその美貌を直視出来るほどアオイの心には耐性がついていない。

そして彼の目には慌てて瞳を逸らした子猫は心なしか怯えているようにも見えて…



「心配するな。食ったりしねぇよ」



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