狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「そうか。授業に集中していない話はさて置き、互いに補い合うのは良いことだ」

「はいっ!」

 遅くなるのにきちんとした理由があればキュリオは怒らないのだとわかり、出来ることの幅が広がったアオイの心は躍るように弾んでいく。
 そしてもうひとつ。

(シュウのこと、嫌っていないか不安だったけど……やっぱり私の取り越し苦労だったみたい)

"喧嘩するほど仲が良い"の言葉をふたりへ当てはめて考えてみれば、確かにそうかもしれないとアオイは安堵する。

 ところでアオイの口から一部始終を聞いたキュリオだが、彼女が思い出し笑いをするほどにおかしな部分がよくわからなかった。恐らく続きがあるのだろうと踏んだ彼は先を促す。

「それだけでは終わらなかったのだろう?」

「……っそうなんです、実は……」

『……って、ことだったと思うよ! ははっ……!!』

 曖昧に笑ってごまかすミキの説明はあまりに矛盾しすぎてシュウの頭上には疑問符が出現していた。

『なんだよ……お前もわかってねぇじゃねぇかっ!』

 椅子に仰け反りながら天井を仰ぐシュウは自分の赤点を覚悟しながらも、アオイは巻き込みたくない一心で寝ずの勉強をするしかないと心に決めたその時。

『ミキ、ちょっと惜しかったかも? そこは確かね……』

 結局、自ら先生役を申し出たミキがすぐに躓(つまづ)き、代わりにアオイが先生となったのだ。
 人に習うことはあっても、教えたことのないアオイはとにかく緊張していたが、それでもなんとなく伝えることは出来たと思う。しかし、己の行動によってふたりの成績が左右されるのだから、ただただ楽しいだけでは済まされない。

「頭ではわかっているのに上手に説明できなくて……」

「人は繰り返すことによって理解を深めていくものだが、教える側はそれを熟知している必要がある。お前がうまく説明できなかったからといって、自分を責めてはいけないよ」

「……でも、嘘教えてたらどうしよう……」

「ああ、それは宿題の答えを見ればきっとわかるだろう。あとは解き方だ。ふたりに伝えたように私に説明してみるといい」

「ぜ、是非お願い致します! アラン先生!」

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