アバターの恋
東京拘置所
ジー、ジー!

東京拘置所に行く道すがら、街路樹から夏の盛りのセミの声が耳をつんざく。

磯山の白い肌に紫外線が容赦なく降りそそぐ。

「先生、刑事さんはどうなるの。死刑になるの?」

「無実ですから、必ず釈放されるよ」

由香は磯山と石井との面会に向かっていた。
由香に事件を思い出させたくなかったが、「犯人をやっつけた。カッチョイー刑事さんに合いたい。おねがい」と何度もせがまれ。母親の死を忘れさせるため、渋々面会に連れて行く事になった。

石井を釈放させるため磯山は東奔西走している。今日の午後も石井の無実の資料を持って警視総監に会うことになっている。

「先生は刑事さんの事好きなの?」

磯山は突然の質問に顔を赤らめた。由香に気付かれないように少し前を歩いた。
心臓も激しく鼓動を打ち出した。

「いいえ」

「なぜ?そんなに真剣になるの?」

「石井さんは人生を投げうって、犯人をやっつけたの。私は無罪にするため一生懸命動くしかないの」

「人生を掛けたのかー。あの刑事さんすごいね。早く会いたい」

「もうすぐよ。その角を曲がれば入り口があるからね」

磯山は先に角を曲がった。
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