29歳、処女。
「と、いうわけで」



内心で呆れ返っている私の気持ちに気づく様子もなく、喜多嶋さんはぴしりと私を指差す。



「お前に魅力があるかないかという問題と、なぜお前が未だに処女であるかという問題は、まったく無関係だ」



そんなにキメ顔で自信満々に言われても。



「それに、雛子は……………し」



喜多嶋さんが真剣な顔で続けたけど、隣にやってきた団体客の話し声が大きくて、聞き取れない。



「え? なんですか? よく聞こえませんでした」



私が軽く前のめりになって耳を寄せると、とたんに喜多嶋さんは一気に不機嫌な顔になった。



「ひとの話はちゃんと聞け」


「聞いてますよ! でも今のは、まわりがうるさくて聞こえなかったんです」


「ほう、人のせいにするんだな?」


「ちがいますって、そういうつもりじゃ」



誤解をときたくて必死に弁解しようとすると、喜多嶋さんは「とにかく!」といきなり声を大きくした。



「お前には大きな問題が複数ある。まず、その格好だ」


「え? 格好?」


「そうだ。ファッションだよ」




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